「ストーリーを考えながら作品を創っています。作品にストーリーがあると、使っている人は愛着が湧いてくると思うのです」と話すのは、主に女性向けアクセサリーを制作している肥後象がん作家の神田明子さん。作品創りにストーリーを織り交ぜる神田さんのもとには、記念品の依頼が多いという。肥後象がんは国指定の伝統的工芸品。その技法はいくつもの工程に分かれており、細かく根気のいる作業を続けながら、深く味わいのある模様を描き出していく。 神田さんの作品は表からは見えない部分にも工夫を施す作風で知られている。「表から見えない部分にこだわる人は多い。例えばスーツの裏生地や茶碗の底など、表から見えないところにちょっとしたこだわりを加えることで、心の満足が得られると思うのです」と神田さんは話す。 今年は九州新幹線開通に伴う熊本市主催の企画で、福岡の博多織と熊本の肥後象がんとのコラボ作品を手掛ける神田さん。「常に向上していたいから、自分を褒めない」と言う神田さんのストーリーは始まったばかり。新しい肥後象がんの世界を見せてほしい。