日本の伝統的工芸品に指定されている天草陶磁器。天草地方は10箇所以上の陶磁器窯元が存在し、陶磁器街道とも呼ばれている。その中でも天草市本渡町水の平にある『水の平焼』は創業240年の歴史ある窯元。内国勧業博覧会で花紋章、日英博覧会で銅賞を受賞するなど全国的にも知名度が高い。水の平焼は鉄分の多い釉薬と稲わらの灰を主成分とした釉薬の2種類の釉薬を組み合わせることで、味わい深い海鼠色の模様を出すのが特徴の陶磁器だ。
水の平焼7代目岡部信行氏のご長男で現在修行中の岡部祐一さんは今後の活躍が期待されている若手陶芸家の一人。岡部さんは父 信行さんから「陶芸は、手取り足取り教えるものではない。一人一人感覚が違うのだから自分で試行錯誤しながらとにかく体で覚えろ」と言われてきた。京都の大学で陶芸美術を学んだ後実家に戻り数々の失敗を繰り返す中で伝統的技術の基本の大切さを改めて感じたという。「伝統的な技術を深く知ることで、イメージを現実化でき、さらに新しい発想が生まれることを学びました」と岡部さん。古きを知り、新しきを知る『温故知新』の精神で作品づくりに励む岡部さんの今後の活躍が楽しみだ。