「自分で作っているお猿さんの顔を見ながら、思わず笑ってしまうこともあるのです」と明るく話すのは『見ざる言わざる聞かざる』の三匹猿で有名な木の葉猿窯元の八代目川俣早絵さん、29歳。父でもあり師でもある永田禮三氏のもとで現在修行中だ。
木の葉猿の由来は奈良時代に遡る。
木葉の里(現在の玉名郡玉東町木葉)に侘住まいをしていた落人が夢枕に立った老翁のお告げによって祭器をつくり、残りの土を捨てたところ猿に化したという伝説から生まれた。
本来は魔除け、安産、子宝などの守り神として広く親しまれたが、次第に郷土玩具として愛用されるようになり、大正5年には全国土俗玩具番付で東の正横綱に選ばれたこともある。
機械を使わない手びねりと呼ばれる手法で作られているため、一体一体の顔や形が微妙に違うところに味がある。
「私は三女ですが、子どもの頃から私が継ぐと決めていました。いつも父の仕事場に行っては、遊びながら木の葉猿を作っていました」と川俣さん。
その当時に作った木の葉猿を見せてもらったが、子どもが作ったとは思えない立派な出来栄えに驚いた。
川俣さんは高校、大学と芸術関連の課程に進み、陶芸技術を学んだ。
『好きこそ物の上手なれ』この言葉が川俣さんをよく表している。川俣さんの作る木の葉猿はどことなく可愛らしく、ファンになる方が多いというのも頷ける。