熊本の伝統的工芸品『髙田焼(こうだやき)』を作り続ける上野窯(あがのがま)は代々細川家御用焼として仕え、明治維新後も八代の日奈久で400年の伝統と技を守り続けている。
今回お会いしたのは髙田焼宗家上野窯十三代目の上野浩平(あがのこうへい)さん、31歳。
なんとなく髙田焼を継承することになるだろうと考えていた上野さんだが、実感は湧かなかったそうだ。
「継がなきゃいけないという気持ちで継ぐのは申し訳なかったんです。そして何より髙田焼の世界だけしか知らないことも凄く不安でした」と上野さん。
高校卒業後、東京藝術大学の美術学部工芸科に入学。陶芸を専攻せず、当時一番興味のあった金属加工・装飾の技法を学んだ。
髙田焼の材料となる土とまったく異なる金属に触れる中で今まで感じることができなかった髙田焼の魅力に気づき、「継ぎたい」という思いが生まれた。
4年前に帰省し技術を磨く中で自分が向かうべき方向性も徐々に見えてくる。
「伝統的工芸品というと敷居が高いと思われがちですが、もっと気楽に楽しみながら使って欲しいんです」。
そんな思いで作り上げた作品が『玉花入』(右写真)。髙田焼には珍しく毬のような球状の作品で花が挿せる穴が開いている。
花を生けた人の表現に合わせて置く角度を自由に変えられる遊び心のある作品だ。
髙田焼の長所を活かしつつ、いかに使う側も楽しめる作品を作れるか自問自答しながら歩み続ける上野さん。次なる作品が待ち遠しい。